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小田蒔丘陵の「ビオトープ」作り

〜ミューズパークを昆虫の森へ                      物環境部会

趣 旨
尾田蒔丘陵に広がるミューズパークは、スポーツと文化施設を中心に開発が進んでいます。地域開発も大切ですが、私たちは自然と調和した開発を望んでいます。ミューズパーク周辺の動植物の実態を調査し、昆虫の森にする手だてを考えていきます。

 埼玉県自然保護課では「秩父地域自然環境現況調査報告書―秩父盆地北西部尾田蒔丘陵とその周辺地域―」という調査報告書を平成4年3月に出しています。その中で動物分野ではつぎのような結果と提言が行われています。

p.198

A長尾根丘陵東側斜面地区

 この地区は、宅地造成、レクリエーション施設の建設により高い人為圧力がかかっており、野生動物の生息環境としてはかなり劣悪なものとなりつつある。残っている林は雑木林としても貧弱で、多種多様な動物を生息させるだけの力は残っていない。

 しかし、広い林を必要とする動物はいなくなっているが、残されている環境で生き残っているものもかなり存在する。特に昆虫類は比較的残っていると考えられ、たとえ一本の木でも大木が残っていれば生き残っていけるものも多い。

 この地区は市街地に近く、レクリエーション施設が存在する等人々が近づくことが容易な地区である。よって、人が動物と親しむエリアとする方向での保全を検討すべきであろうと考えられる。

 特に、上部のレクリエーション施設はまだ敷地内に多くの林を残しており、これらの林を活用し、自然と親しむ施設の整備が望まれる、また、昆虫の生息のために重要である木(特に大木)はできる限り切らずに残すべきである。たとえ面積があっても細い木ばかりの林よりも、大木が一本残っている方が昆虫の生息にとって大きな意味を持つためである。

P.199

B長尾根丘陵西側斜面地区

 基本的に東側と同じ環境条件と考えられる。東側に比べると森林部の幅が広く、森林として動物を生息させる力が比較的残っていると考えられる。

 特に、蒔田川源流部にムカシトンボの生息地がある。ムラサキシジミ、コオイムシ、林にはニッコウムササビ生息している。

 ムカシトンボの生息には、水温の低い湧き水が必要であるが、その水源地である丘陵上部の森林がレクリエーション施設の建設によって失われつつあり、湧水の水質・水温の変化が懸念される。このような観点からも、レクリエーション施設の整備の方向についての適切な配慮が必要であると考えられる。

P.200

E長尾根丘陵西部地区

 この地区は、長尾根の西南部とそれに連続する丘陵地帯である。この地区は、さらに西側にある丘陵地帯とつながっており、自然環境的にもその影響が強いものと考えられる。

 また、森林の面的な広がりもあり、動物の生息環境の観点からみた場合、かなり良好な状態が保たれているといえるであろう。特に、昆虫の分布状況から見て秩父地域の典型的な標本地区であるといえる。また、本来この地域にあるべき動物相が最もよく残っている地区であるといえる。

(中略)北側には、ムカシトンボ、トワダカワゲラ、南側ではタイコウチ、ミズカマキリといった、かつては全国どこの池でもみられたが、現在滅多にみることができなくなってしまった水生昆虫が多数生息している。

P.205

3.4 評価図の活用及び環境資源の保全と利用のあり方

 調査対象地域の動物は、全国的にも非常に価値の高いものを含め、かなり豊富な種が生息している。

(中略)現在に至るまで、動物の生息に良好な環境が比較的よく残されていたと考えられる。このように調査対象地域は、特殊な動物が生息する地域ではないが、ごく身近なところで動物とふれあうことができる環境が残された地域であるといえる。

 かつては日本全国各地にあった場所であるが、現在は非常に貴重なものとなっている。こういった環境は一度失ったらもう、二度と回復することはできない。

 大きな影響を与える要因は各種の開発であろう。(中略)

 開発に対する適切な指導が必要である。

 現在、調査対象地域に残されている、良好な自然環境の存続を図るためには、各種の広報活動を通じ積極的に本地域の自然環境を守ることの重要性を強調し、人々の意識を高めることが肝要である。

P.206

 また、調査対象地域において、すでに着工・竣工している施設については、少しでも動物の住みやすい環境にするための配慮が望まれる。たとえば、昆虫採集や野鳥観察の森として、できるだけ区域外の森林とつながる形で林を残すことや、多くの小動物のすみかとなる大木を切らずに残すといったような方向での開発が望まれる。また、できるだけ残地林を外部と連続した形で残し、動物が通行できるようにするといった配慮も可能であろう。このように、この地域での開発にあたっては、本来この地域が持っている、自然的特性を十分理解し、それを生かした土地利用が望まれる。

 

以上です。そこで以下のようなことを考えています。(前文に続きます)

 

 しかし、その後改変が進み、道路整備、東屋,展望滑り台などが設置されてはいるものの、自然観察などに関する施設は未整備の状態です。また、カブトムシやクワガタムシの集まるクヌギやコナラなどの植林はほとんどなされていません。そこで、まずは一年を通じてミューズパーク内でみられる昆虫を採集して標本化し、分布、発生状況を把握する計画です。

 

1 調査対象地域 ミューズパークとその周辺地域
2 対象動物 チョウ、トンボ、セミ、甲虫、水生昆虫など、その他
3 方  法   一年を通じて採集標本は資料として保存する。データは会報、パソコン通信を通じて公表する。生物暦、生物マップづくり等を実施していく。
4 発  展   子ども対象の昆虫採集教室、学習会、トラスト運動

 

昆虫の森(昆虫採集の森)構想

 

 埼玉県は、「環境優先、生活重視」を掲げ、豊かな彩の国づくりを目指し、各地に生活にやさしい環境づくりを進め、施設・設備の充実を図っています。秩父長尾根のミューズパークもそのひとつですが、施設・設備の充実とともに行われているのは、残念ながら人工的自然の造成のように思われます。切り開いた道路の整備だけでなく、自然の回復を図ることや自然を生かしたレクリェーションの方法を開発するなどの方策も期待されます。

1.昆虫の生息地つくり

 A.雑木林を中心に

 代表種を例にあげて考えてみます。

 @カブトムシ

 秩父地方では、7、8月に成虫が発生します。生活史を追って、生息環境を考えます。産卵場所及び幼虫の生活場所
 たい肥、広葉樹の落ち葉、くち木などの中に産卵 する。幼虫は腐植質を食べ、成長する。

成虫の生活場所
日中は、木の根元に潜り、夜間に樹液を吸いに集まる。特に、クヌギ、コナラなどに樹液が多く出るので、集まりがよい。
 
(対策)産卵場所つくり     たい肥づくり、落ち葉、くち木を一カ所に集める。シイタケのほだ木の廃材の利用も考えられる。成虫の餌場つくり 吸蜜植物の植栽、とくにクヌギ、コナラ。樹液の出るメカ ニズムが解明されていないので、どの木が樹液を出すか出さないかはわからない。なるべく多くの木があることが必要である。現在あるクヌギの木も大切にしたい。モモも好まれる。どこかに植えるのも良い。

 

 Aオオムラサキ

 秩父地方では、7、8月に成虫が発生します。生活史を追って、生息環境を考えます。

産卵場所及び幼虫の生活場所 食草はエノキ。8月、産卵された卵はふ化すると、エノキを食べ、幼虫で越冬。6月に蛹化し、7月に成虫となる。オスが先に羽化する。

成虫の生活場所 クヌギ、コナラなどに樹液に集まる。モモなどにも集まる。また、動物の糞などにも集まる。

 

(対策)産卵場所つくり エノキの植栽があげられる。しかし、エノキは普通に見られる樹木であり、特に植栽する必要があるかどうか今後の調査によって判断したい。現在ある木を見つけだし、分布図づくりと冬季に幼虫の確認をすることも重要。

エノキは近縁種のゴマダラチョウ、同じタテハチョウ科のヒオドシチョウ、テングチョウの食草でもある。成虫の餌場つくり  カブトムシに同じ。

 

 Bアゲハ類

アゲハ(ナミアゲハ)、クロアゲハ、モンキアゲハ、―[カラタチ、サンショウ、ミカン]

オナガアゲハ、カラスアゲハ―[コクサギ、イヌザンショウ、サンショウ、キハダ]

ミヤマカラスアゲハ―[キハダ、ヒロハノキハダ]

ジャコウアゲハ―[ウマノスズクサ、オオバウマノスズクサ]

キアゲハ―[ニンジン、セリ、パセリ]

アオスジアゲハ―[クスノキ、シロダモ]

(対策)産卵場所つくり 上記の植物を公園内に植えると良い。薬用植物園内やピクニック広場に植えるなど。成虫の餌場つくり  春から秋にかけて、花があれば良い。クサギの花も好まれる。

 

Cバッタ類

 ピクニック広場などがあり、草地も用意されているので、草地に生息する昆虫類も生息可能である。ススキなどを食草とするチョウや乾燥した草地を好むものなどがいるので、どこかにススキ野原があっても良いかも知れない。

 

 雑木林が維持されれば、生物草の多様性はある程度確保されると考えられる。現在、樹液を出すクヌギが何本かあり、カブトムシ、クワガタムシ、オオムラサキなどがよく集まっている。このような木をもう少し確保して、いつでも行けば見られる状態を作り出したい。

現在、カブトムシなどを集められる木は林の縁にある木である。林の中にはいるのも大変であるが、縁の木に多く見られることは、注目して良いことだと考えられる。特に、オオムラサキやカブトムシなどは飛翔して、樹液の出る木に集まってくるので、込み合った林の中の木には入りづらいようである。

観察会を実施する際には、これらの木を活用することはもとより、糖蜜を塗るなどの準備をして、昆虫を集めることも必要である。

 

B.水辺を中心に

 水辺環境があると生物相はより多様になります。ミューズパークの下は北側も南側も水が豊かです。公園内にも、ピクニック広場に直径1mほどの池があります。春にはトウキョウサンショウウオが小数ながら産卵をしています。また、カエルも種類は確認できませんでしたが、生息しています。

周辺部にはホタルの発生が見られたり、北側の湧水からの流れにはムカシトンボが生息していたとの報告もあります。また、最近ではほとんど見られなくなった水生昆虫のコオイムシやタイコウチなども北側の地域の池や休耕田の中に見られます。公園内にも小規模でも水辺環境が整えられると、より多様な自然が公園を訪れた人達に提供できると考えられます。公園内にはいくつかの人工的な池(沈殿池?)があります。これらの周辺及び池の中を整備し、水生昆虫や動物の住める水辺環境づくりが求められます。

具体的には、池の周囲に木を植え、池に日陰を作ることや池の中に挺水植物、沈水植物を植え、より複雑な環境を作って、水生昆虫を生息させることも重要と考える。

 

2.吸蜜源の確保

 多くの昆虫は、植物の出す蜜を吸って生活している。花や樹液の蜜源の確保が多様な昆虫相を維持するためには必要である。前述したように、樹液の出るメカニズムは解明されていないので、できるだけ多くの木が必要である。ただ、コナラに比べ、クヌギのほうがよく樹液を出しているようである。

また、モモもよく昆虫を集めている。カキなども熟した実が鳥だけではなく、地上に落ちたものを成虫越冬性のチョウがよく利用している。

公園内に「四季の百花園」が計画され、工事が始められるようであるが、昆虫が利用しやすい植物が植えられると良いと思われる。その中には、直接利用できる食草も含まれると良い。

 

3.生息マップづくり

 現在行っている年間調査を通じて、昆虫生息マップを作る。

1)全体マップ(例参照)

一般によく知られている種、公園内でよく見られる種を選んで、公園内で見られる場所、木を地図上に落とす。(季節ごと、月ごとに制作する。)

例えば、@カブトムシ、クワガタムシのマップ。

    A春先のチョウ、ミヤマセセリ、コツバメ、ツマキチョウ、アゲハ

    Bオオムラサキのいるエノキの分布図

    

2)ポイントマップ(例参照)

 公園内のポイントを選んで、その場所の詳細な地図を作る。(季節ごと、月ごとに制作する。)

 

3)観察ガイドマップ

 いくつかの遊歩道や公園内の道路を組み合わせて、観察路を設定し、地図づくりをする。(季節ごと、月ごとに制作する。)

例えば、6月の夕方には林の上をアカシジミ、ウラナミアカシジミ、オオミドリシジミなど、いわゆるゼフィルスと呼ばれるシジミチョウが見られる。このような時間、空間情報を取り入れた地図づくりができると良い。

 

4)東屋を利用した情報案内板の設置

 現在、東屋が公園内の各地点に設置されている。ここに案内板を設置し、情報提供を図る。また、中には案内シートやリーフレットを用意し、周辺で見られる動植物のインフォメーションセンターとしての機能を持たせる。

いくつかの観察適地には東屋からみえる範囲のポイント(木や花)を示すことも可能である。

 

5)観察ポイントに解説板の設置

 例えば、エノキの所にエノキの説明、エノキを食草とするオオムラサキなどの写真、説明などを設置する。

草原であれば、そこに見られるバッタ類、鳴く虫の解説などを入れる。

 

4.常設夜間採集場の設営

いつでも夜間採集ができる調査場所があると良い。夜間採集は、カブトムシやクワガタムシ、セミなども飛来し、子どもたちには見たこともないようなさまざまなガが飛来する。学習の場としても、簡単に利用できる常設の夜間採集場が役に立つと考えられる。

電源、照明など、案内板程度のもので調査ができ、効果が大である。

 

5.監視カメラによる24時間定点観察システムの導入

 樹液の出るクヌギには、昼間はオオムラサキなどのチョウやスズメバチ、夜はカブトムシやガなど、入れ替わり立ち替わりさまざま種が集まって樹液を吸っている。この様子はなかなか普段観察することはできない。そこで、観察木に無人の監視カメラを設置し、いつでも居ながらにして、樹液に集まる昆虫を観察することができるようにする。これはVTRで、テープにすることも可能である。

 

6.インフォメーションセンターの設置

 公園内に生息する生物に関する情報を提供できるセンターの設置を求めたい。公園内に生息する昆虫の標本展示、ビデオ、調査方法、採集方法、発生時期などの情報をいつでも得られる場所として欲しい。発展的には採集してきたもので標本作製できる教室があると良い。

前述の監視カメラを通した観察もこの中で行うことができると良い。

コンピューターの設置で、公園内の情報提供を行うようにしたらよいと考えられる。コンピューターの利用により、公園内でなく、広く秩父の情報を得ることもできたりすれば、さらに施設の利用法も広がるであろう。